2021.08.12 放送 就労支援について

DJ: 東さんは、30年もの間 保護司活動を続けておられます。

東: はい、これまで約70人余りの更生、立ち直りに携わってきた保護司の経験をお話ししたいと思います。犯罪をして刑務所に入った人も、刑期が終われば必ず社会に帰ってきます。こうした人たちが二度と罪を犯すことなく、確実に更生することは、社会の安全にとても重要なことです。
刑務所を出ても、頼るべき親族や知人がいない中で、すぐに自分一人の力で生活しながら更生することは、決して容易なことではありません。こうした人たちが確実に更生できるようにするため、刑務所からの釈放と同時に国が手を放しいきなり一人で社会に戻すのではなく、出所後も一定期間、国の専門機関 つまり保護観察所ですが、の監督下に置き、犯罪とは縁のない健全な社会生活を送れるよう、指導や援助をしていくことが必要です。

DJ: なるほど。

東: 一方で、裁判で言い渡された刑期が終われば、国の監督下でその人の自由を制約することは出来ません。そこで、刑務所内での成績が良好で、更生意欲があると認められる人については、刑期が終わる前に刑務所から仮に釈放し、刑期満了まで一般社会の中で国の監督下に置きながら、必要な指導や社会復帰の支援をする「仮釈放」と「保護観察」という制度があるのです。定められた約束事を守りながら、指導や監督を受けなければなりません。刑務所生活と 一般社会での自由な生活との中間段階です。約束事を破れば、刑務所へ戻されることもあります。

DJ: 保護司の支援が大きな意味を持ちますね。

東: 刑法犯罪における検挙者が減少している中にあって、刑務所出所者の約5割が再犯者となっている日本では、社会復帰を手助けする保護司の役割がとても重要です。しかしながら最近では、保護司の高齢化や成り手の減少が大きな課題となっています。保護司は犯罪や非行をした人の更生を目的に、日常生活の助言や就労の援助などを行い、保護観察所に毎月報告書を提出する役目を負っています。法務大臣からの委嘱を受け、身分は非常勤の国家公務員です。保護司の任務には報酬はありません。プライベートな時間も使うので、時間の調整が大変です。なぜ私が30年もの間続けてこられたのかというと、それは担当している人が『更生に至る』言わば『生まれ変わる』過程を目の当たりにしたからです。その喜びはまさに保護司冥利に尽きると言えます。

DJ: 間近にその様子を見られるのは、本当に嬉しいことですね。

東: ある年の3月、私の携帯電話に、見慣れぬ番号から着信がありました。「以前お世話になった○○です。高校を卒業することが出来ました。ありがとうございました。卒業できたことをお知らせしたくて電話しました」と、若い男性の弾んだ声でした。「大学にも行こうと思っています」本人の発する言葉に、私はすぐに返答できず、目頭が熱くなってしまい、「おめでとう、良かったな~。連絡ありがとう」と答えるのがやっとでした。

DJ: 素敵なお話ですね。ところで、東さんは就労支援の活動もされているとか。

東: はい、兵庫県就労支援事業者機構の尼崎分室、就労支援員としての活動が3年目になります。再犯防止には自分に合った仕事を見つけられるかどうか、が大きなポイントになります。これまでに20数名の就労支援対象者に対応し、協力雇用主の方々との出会いがあり、この仕事に就いていなければ知りえなかった、とても貴重な経験が出来ています。

DJ: 根気のいる、大変な仕事なのでしょうね。

東: 先ず就職支援活動ですが、刑事施設内での面接、仮出所や少年院からの仮退院当日の面接を通し、本人の希望があれば就職活動支援を始めます。ただ求職する側の多様性、諸事情が複雑で、わがままな人が少なくありません。労働時間、職種にこだわる、通勤手段、宿舎の要望など様々です。また阪神地域の特性だと思われますが、友人や知人を通じて、あるいは自分自身での就職活動によって、仕事に就くことが多いです。協力雇用主として登録されている事業所への就職は、残念ながら未だほんの数名です。
次に、職場定着支援という活動もしています。本人を励まし、困った時の相談相手だと伝えています。自分で就職活動を行い、派遣従業員として採用され、仕事を続けた対象者から その後、「正社員になり、近いうちに結婚します」との嬉しい報告を受けた事例もありました。
もう一つ、雇用基盤整備という業務もあります。現在、神戸保護観察所に登録されている協力雇用主は約750社、半数以上が建設関係の事業所です。対象者の雇用拡大のために多様な業種の協力雇用主の新規開拓が望まれています。

DJ: さまざまな仕事内容の全てがとても大切なものだと感じます。

東: 本人自身の努力により、働くことに生きがいを感じ、社会の一員として安定した生活ができるように、就労支援員として寄り添い、援助をして行く事で、再犯防止につなげられるよう、心掛けていきたいと思っています。一人の人間が立ち直る、このことに関わることが、何物にも替え難い私の財産となっています。