2022.09.08 放送 新人保護司

MC: 法務省が主唱する、全国的な “社会を明るくする運動” の一環として、7月から『更生保護』に関する話題を 様々な視点からお届けしています。 5回目の今日は、新人保護司の方からお話を伺います。

能島: こんにちは、能島裕介と申します。令和3年10月に保護司の委嘱を受け、約1年が過ぎようとしています。

MC: 能島さんが、なぜ、どのようにして、保護司活動に参加しようと思われたのか、お聞かせいただきたいと思います。

能島: 先ず、自己紹介をします。 現在、私は、尼崎市役所で「こども政策を統括する理事」という仕事をしています。あわせて教育委員会でも教育次長を務めています。

具体的な仕事としては、市が行う「こどもや若者に関する政策」について、その立案などを行っています。例えば、最近では『こどもの育ち支援センター』や『ユース交流センター』の立ち上げなどに関わりました。

教育委員会の方では、学校の先生方の人事や 教育に係る予算、学校などの教育施設の管理や社会教育、例えば図書館や歴史博物館の運営などですが、それを所管しています。

MC: 大切なお仕事を、たくさん担当されているのですね。

能島: 尼崎市役所へ入るまでは、西宮市内で こどもや青少年の支援を行うNPO法人の 代表を務めていました。 そこでは、地域の子どもたちを対象にして キャンプやハイキングなどの野外活動を一緒に楽しんだり、 不登校の子どもたちの支援を物心両面から行ったり、 生活困窮家庭の子どもたちの学習支援などをしたり 多岐にわたる活動をしていました。

MC: ずっと、子どもたちに関わる活動をしておられたのですね。

能島: 今から9年前、2013年から尼崎市役所に関わり始め、2019年に「こども政策を統括する理事」に就任しました。 今年4月からは、教育次長も併任しています。

MC: こんなに お忙しい能島さんが、なぜ保護司になろうと思われたのでしょう。

それでは、ここからは保護司に関してお伺いします。能島さんが保護司の活動を知ったきっかけをお話いただけますか。

能島: 保護司の活動については、大学時代から知っていました。

大学時代は 法学部で刑事法や刑事政策を専門とするゼミに所属しており、少年法や更生保護などの勉強もしていました。 大学在学中に自分自身が阪神・淡路大震災で被災し、それから同じように被災した子どもたちの支援を行っていましたので、非行なども含め、困難な状況にある子どもたちの支援には関心を持っていました。

MC: そうですか、大変な状況を経験されたのですね。保護司になろうと思われたのは、いつごろですか。

能島: 大学を卒業した後、1年ほど銀行で働きました。その後、大学時代にしていた活動を法人化するため、銀行を退職しました。 NPO法人では、子どもたちを対象にした野外活動や不登校の子どもたちの支援などを行ってきましたが、2008年のリーマンショック以降、 経済的に困難な状況にある子どもたちの支援も行ってきました。無料の学習支援や学校外教育バウチャーとよばれるクーポン券の給付などの活動です。

そのなかで困窮状態にある子どもたちと多く出会う機会がありましたが、単に経済的に困窮しているだけではなく、家庭環境自体も非常に厳しい子どもたちも多くいました。

そのような中、困難を抱える子ども達について学びを深めて行くと、厳しい家庭環境のゆえに反社会的な傾向をもつ子どもたちも 少なくないことに気づきました。つまり、生活困窮状態にある子どもについては、そうでない家庭の子どもと比べて、犯罪発生率などが高いということを学んだのです。

 そこで自分でも何かできることはないかと考える中で、学生時代に知った保護司の活動を思い出しました。すべての子どもたちがしっかりとチャンスを持つことができる社会。仮に失敗したとしても、しっかりと立ち直ることのできる社会はとても大切だと考えています。

MC: 立ち直りを見守り、応援できる社会は本当に大切ですよね。これまで、この番組に出演してくださった保護司さん、関係団体の皆さん、“社会を明るくする運動” の作文を朗読された生徒さんたちからも、たくさんのメッセージをいただきました。

ところで、能島さんが1年前に保護司の委嘱を受けられて以降の活動状況はいかがですか。

能島: まだ新人保護司の研修を終えたばかりで、保護観察事件の担当などはしていません。保護司としての仕事の第一歩である 保護観察対象者との面接の心得、ロールプレイングによる面接練習、報告書の書き方、等々の研修を積んでいます。     

毎月1回、自分が所属している分会、私は園田分会に所属しているのですが、その月例会に出席し、先輩保護司のケース研究などを通して学びを深めます。ただ私は仕事が忙しく毎月欠かさず出席とはいきませんが…。 その場で、他の保護司の皆さんの活動などを拝見すると、とても熱心な方々ばかりで大変、驚いています。常に保護観察対象者の味方となり、親身になって対象者の声に耳を傾ける姿勢は、すべての活動の基本であると思っています。私が現在、尼崎市役所で携わっている仕事にも、この姿勢は欠かせません。

MC: 社会の中で円満な人間関係を築くために、『傾聴』する姿勢、親身になって他人の話に耳を傾ける姿勢は大切ですね。

さて、能島さんは、今後の展望として、どのようなことを考えておられますか。

能島: 現在尼崎市保護司会に所属しておられる 他の保護司の方々を拝見していますと、ご高齢の方が多く、若い保護司が極めて少ない状況です。

この保護司という日本発祥の制度自体を活性化し、継続させていくためには、やはり若い世代の参画が極めて重要だと思います。そのためには大学生等によるBBS活動をさらに活性化させることや、現役世代の保護司も活動に参加しやすいよう 研修や会合のあり方を見直すことなども 必要ではないかと思ったりしています。 現在、保護司会でも活動の内容や実施方法などに関し、検討や協議が始まっていると聞いています。  

BBS活動に関しては、8月25日に こちらの「みんなの尼崎情報局」番組内で放送がありましたよね。聞き逃された方は、尼崎市保護司会ホームページに 放送原稿がアップされますので、そちらを読んでいただければ、と思います。

MC: 最後に何か、みなさんにお伝えしたいメッセージはありますか。

能島: 昨今の社会は他者に対する寛容さがなくなってきているように思います。

誰でもが困難な状況に陥ったり、誰でもが失敗する可能性を持っています。もし困難な状況に陥ったり、失敗したとしても、周囲がそれを寛容に受け入れ、再チャレンジができるような社会を作っていくことがとても大切だと思います。そのためにも保護司の活動は大きな意味を持っていると思います。

MC: そうですね。今日は、尼崎市保護司会の新人保護司 能島さんにお話を伺いました。能島さん、ありがとうございました。

能島: ありがとうございました。